週間国際経済2015(7) 05/11~05/17

05/11
・日銀、買える国債先細り? 異次元緩和、新たな懸念 銀行など売り手減る
 年80兆円ペースの買い増し 新規発行国債37兆円すべて買っても43兆円を買い集める必要
 緩和効果も乏しく副作用が懸念(金融政策を正常化するときに国債を売ることができない)
・中国、追加利下げ0.25% 昨年11月以降3回目 <1> 安定成長へ決意
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05/12
・中国の新車販売4月0.5%減199万台、2年7ヶ月ぶりマイナス 景気減速映す
・インド新車販売4月14%増26万台、4ヶ月ぶり二桁増

05/13
・ギリシャ経済混乱深まる ユーロ圏財務相会合で支援再開先送り
 6月末には現行支援が期限 交渉継続も5月末が正念場
・南シナ海埋め立て合戦 中国への反発強まる <2>
 ベトナム、軍事施設を新設 フィリピン、滑走路を改修へ
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・韓国朴政権、外交・安保で逆風 対日・対北朝鮮、政府批判強まる

05/14
・日本経常黒字4年ぶり増加 昨年度7.8兆円 旅行収支55年ぶり黒字 <3>
 原油安で貿易赤字も縮小(6.5兆円) 海外投資収益は19兆円の黒字
 ⇒ポイント解説あります
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・ユーロ圏、GDP0.4%増(1-3月)8四半期連続プラス 緩やかな回復維持 <4>
 原油安とユーロ安が雇用・消費に追い風 原油価格上昇、ギリシャ債務問題など懸念
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05/15
・安倍内閣、安保政策関連法案を閣議決定 集団的自衛権可能に <5>
 自衛隊、米軍と緊密連携 首相、米軍の保護強調 中国念頭「抑止力に」
 首相、米国の戦争に巻き込まれることは「絶対にあり得ない」
 国会では「歯止め」焦点に 自衛隊法など10法案を束ねて一括審議
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・中印首相会談 アジア投資銀で連携
 モディ首相訪中 両国企業による総額100億ドル規模の事業協力でも合意

05/16
・アジア投資銀 中国と欧州が発言権で火花 出資比率、理事ポストで
 欧州勢、出資比率を25%から30%に理事ポストも12人中3人から上積み迫る
・BRICS銀行、年末にも運営開始 アジア投資銀と補完

05/17
・ケリー米国務長官訪中 南シナ海緊張緩和促す 中国外相、首相らと会談
 中国南シナ海埋め立て「主権の範囲内」米の出方を見定め
 ケリー長官「米中は競争関係ではなく、ともに発展する関係だ」軍制服組トップとも会談
・ASEAN、TPPに冷めた目 小さくなる日米の姿 「けいざい解題」
 学級委員長(米国)は態度がでかい、副委員長(日本)は頼りない、クラスはまとまらない

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ポイント解説 (7)

昨年度経常収支から日本経済の何が見えるでしょうか

 2014年度日本の経常収支は約7.8兆円の黒字でした。黒字額は2010年度に18兆円以上ありましたがその後減り続け2013年度には1.5兆円近くにまでになり、増加したのは震災後初のことです。「黒字が増える」ってなんとなくいい気分ですが、その中身から今の日本経済を見てみましょう。

1.貿易赤字は6兆5700億円でした

 日本の貿易収支が赤字(輸入超過)になったのは2011年度からです。その要因としてまず第一に原発停止で化石燃料の輸入が急増しました。第二に円安です。当時の1ドル=80円台から1ドル=120円近くまで円はドルに対して安くなりました。これは1ドル分の石油や食料を輸入するのに支払いが80円だったものが120円になる、つまり同じ1ドル輸入でも輸入額は40円増えることを意味します。第三に最大の貿易相手国である中国への輸出が大幅に減少したことがあげられます。2013年度から赤字額が約4.5兆円減ったのは国際原油価格の急落が大きく影響しています。今年になって原油価格は底値から4割以上高騰していますからよほど輸出が伸びない限り貿易赤字額は増えるでしょう。

 さて経済成長率はGDP増加率ですが、GDPを需要面から見るとY=C(消費)+I(投資)+NX(純輸出)となります。日本のGDPは約490兆円ですから6.5兆円の貿易赤字は1.3%ほどGDPを減らしている計算になります。

2.旅行収支が2100億円の黒字になりました。

 旅行収支とは訪日外国人が日本で使ったお金から日本人が海外旅行現地で使ったお金を差し引いたものです。昨年の訪日外国人は1460万人を超えて過去最多、一方日本人の海外旅行は円安もあって減りました。2013年度の旅行収支は5300億円の赤字でしたから昨年度の経常収支増に貢献度大ということです。外国人旅行者が日本で使ったお金は2兆2000億円、GDPの0.4%以上にあたります。国内消費が冷え込む中、これまた貢献度大ということですね。

3.海外投資収益は19兆2500億円の黒字です

 日本企業の海外子会社からの配当や利子の受け取りから外国企業の日本子会社からのそれを差し引いた第一次所得収支が前年比で10.5%増えました。19兆円超えとうのは比較できる1966年以降で初めてのことです。とくに海外直接投資収益が21%増の7兆円超え。内需型企業までもが海外に進出したことが昨年度の特徴です。この海外投資収益が経常収支黒字を生み出しているのですね。今年になっても3月だけで2.3兆円以上の黒字を計上しています。これって、いいことなんでしょうか。

 円安で輸出関連企業は大もうけしています。輸出はそれぼど増えていないけどもうけています。1ドル=100円から1ドル=120円に円安になると、同じ1ドル輸出でも売上は20円増えるからです。この理屈は海外で資金運用を拡大している金融機関にも同じことが言えます。もちろん悪いことではありません。問題はその「もうけ」が国内ではなく海外に投資されているということです。ましてやアベノミクスで日銀は大量の資金をゼロ金利で供給しています。この資金もまた、海外投資に向かっているという傾向を統計は示しているのです。

4.そもそも経常収支黒字が増えることはいいことなのでしょうか

 経常収支は海外との取引を表すものですが、この対外バランス(帳尻)は国内の貯蓄と投資のバランスと等しくなります。国と国との関係ではピンとこないのですが、例えば個人や家計では外で働いて外で買い物をしたら、自分の財布や通帳の中身が変わります。将来のための教育費は投資ですが、これは当面の貯蓄を減らします。スーパーや家電屋さんが店内をきれいにしたりチラシを配ったりせず、つまり投資を控えれば当面黒字になるでしょうが将来は他店との競争に負けるでしょう。

 ですから、経常収支=(国内民間貯蓄)-(国内企業投資)+(財政収支)となります(財政収支は公的部門の貯蓄マイナス投資です)。対外バランス(経常収支)は国内バランス(貯蓄マイナス投資)に等しいのですね。

 さて、日本の財政収支赤字は莫大で、しかも年々増えています。なのに経常収支が増えているということは、民間貯蓄が増えている(所得が同じならば消費が減っている)あるいは企業投資が減っている(あるいは内部留保が増えている)ことを示しています。見たように企業の海外投資は増えています。しかし日銀の調査では大企業の2015年度設備投資計画は前年度比マイナス1.2%となっています。

 黒字はいいこと赤字は悪いこと、とは簡単に言うことはできない、黒字の中身も見ないといけない。経常収支黒字が増えたということは、国内の貯蓄過剰(=消費低迷)&国内投資不足という日本経済の課題が、少なくとも改善されてはいないという事実をも示していると言えるのです。

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