今週のポイント解説(34) 11/18~11/23
インバウンド「リピーター」
1.明るい話題
掛け声勇ましい「第2ステージ」アベノミクスですが、足下の経済指標は暗いものばかりでしたね。7-9月実質GDPは0.2%減で4-6月期に続いて2四半期連続でマイナスでした。個人消費は前期の0.6%減を取り戻せない0.5%増、設備投資は1.3%減で前期よりさらにマイナス幅が広がりました。10月の輸出も14カ月ぶりに前年同月を下回りました。 「ポイント解説」もたまには日本経済に関する明るい話題が必要です。景気がいいと言えばなんといってもインバウンド、そう訪日外国人消費ですよね。観光庁によると今年1-9月でそれは2兆596兆円に達し、年間で3兆円突破は間違いないとのことです。これは昨年の1.5倍の規模です。7-9月だけでも1兆円に達しました。同期間中のGDPマイナス分を上回る数字です。
2.リピーター需要
11月23日付日本経済新聞に面白い記事がありました。言われてみれば「なるほど」というやつです。インバウンド関連品目の輸出額が今年1兆円を突破する見込みだというのです。観光庁の調査では、訪日客の64%が「菓子類」を購入するのだそうです。これがインバウンド関連品目の第1位、続くのは「その他食料品」、「医薬品・健康グッズ」、「化粧品」、「服・かばん・靴」、これら上位5分野の輸出額がそれぞれ今年になって30%前後伸びているとのこと。お土産をきっかけに帰国してからも同じ商品を輸入購入しているのですね。
これが設備投資への波及効果も見逃せないようで、例えば紙おむつの工場が新設されたり、ホテル改修などで新規需要が生み出されているようです。ただインバウンドには円安効果が下支えになっている面があります。記事は「日本製品の愛好家に飽きられないような商品開発を続けるだけでなく、品質への信頼を保つことも重要になる」と締めくくられています。
3.目に見える指針
スッキリします。ぼくは円安やTPPでどの分野の輸出が増えるのか見えていませんでした。アメリカやカナダ、オーストラリアを相手に農産品輸出が倍増するなんて信じられませんし、自動車の輸出関税がゼロになるのは25年後だし。むしろ内需向けだった産業は円安で苦しめられていたはずですから、これらの関連商品が輸出を伸ばして意欲的に設備投資をするならば景気への波及効果は大きいと思います。
ぜひとも政府の後押しが欲しいところです。インバウンドはこの7-9月期だけでも1兆円を超えました。その46%は中国人観光客です。その中国ではネット通販が急速な伸びを見せています。こうした連関が高品質で安全な農産物品にまで及べば力強いマーケットに育つ可能性があると思います。
しかし実際のところ、例えば日本の対中国投資は今年1-10月で前年同期比で25%減少しています。同じ時期、世界の対中投資は8.6%増えている中にあってです。「日中経済協力の進展」、アベノミクス第2ステージの「4本目の矢」に加えてもよさそうに思えるのですが。
日誌資料
11/18
・自民農林関係合同会議がTPP対策『農政新時代』不安解消へまず保護策<1>
所得補填手厚く 攻めの農業は1年かけて具体化 大規模化後押し焦点
・厳戒欧州、景気に懸念 ヒト・モノ移動制限 消費や企業投資に影
・日本、対中投資1~10月25%減 世界全体からの対中投資は8.6%増
11/19
・米「利上げ条件12月整う」FOMC議事要旨公表 大半の委員想定
・米英仏ロ、空爆で「足並み」 対「イスラム国」作戦協力が課題 <2>
オバマ氏「ロシアは建設的パートナーだ」
・日本貿易黒字7カ月ぶり 原油安が寄与 輸出額は14カ月ぶり減少 <3>
10月1115億円 輸出額は前年同月比2.1%減 原油などの円建て輸入価格が47%下落
11/20
・日米首脳会談(マニラ、19日)南シナ海に自衛隊検討 <4>
・APEC(アジア太平洋経済協力会議)首脳宣言採択(マニラ、19日)
TPP明記巡り応酬 南シナ海は議題にせず テロ対策取り組み強化
・TPPで「新輸出大国」自民党が対策
・面接解禁来年は6月 経団連、就活2カ月前倒し決定 2年連続変更
11/21
・EU緊急内相・法相理事会 国境検査を強化 情報共有や銃規制も
・政府TPP大綱案明らかに「アベノミクス成長戦略の切り札」
農産品輸出1兆円目標 中小企業の海外進出支援 海外インフラ受注30兆円
11/22
・ASEAN首脳会議 南シナ海で紛糾 米中、東南アジアに「踏み絵」
インフレ投資、日中競う ASEANしたたか「ほどよい摩擦なら悪くない」
・ASEANプラス3(日中韓)首脳会議 経済危機予防で国際機関
クアラルンプール、21日 チェンマイ・イニシアティブ拡充でも一致
11/23
・ASEAN経済共同体(AEC)来月31日発足へ 「6億人市場」へ一歩 <5>
10ヵ国首脳会議(クアラルンプール22日)宣言 サービス自由化に遅れ
・訪日客消費、投資・輸出波及 「リピーター」が押し上げ
輸出:菓子・化粧品など5分野1兆円 投資:工場新設やホテル改修 課題は円安後
11/24
・法人税率下げ「早期に20%台」検討が本格化 現在32.11%
・企業の設備投資なぜ増えない 資金使途、海外重視に M&Aが大幅増
需要が増えない国内より海外に投資するのは当然(経営者、外国人株主)
・軽減税率、生鮮食品軸に 首相、財源4000億円念頭 自民、公明と調整へ