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週間国際経済2019(3) No.171 01/14~01/26

今週のポイント解説(3) 01/14~01/26

縮む米中貿易、縮む世界経済

1.中国もアメリカも輸出を減らしている

昨年9月に発動されたアメリカの対中知財侵害制裁関税第3弾と、それに対する中国の報復関税によって、米中貿易は急失速し始めた(数値は1月15日付日本経済新聞)。2018年12月の中国貿易は、対前年同月比で輸出が4%、輸入が8%減ったが、これは対米貿易の落ち込みによるものだ。対米輸出は9カ月ぶりにマイナスとなり4%減、輸入は4カ月連続の前年割れで、12月は36%と大幅に減っている。

2018年通年では、中国の対米輸出は前年比11%増え、輸入は1%増にとどまったから、対米貿易黒字は17%増の3233億ドルと過去最高を更新した。トランプさんの公約は貿易赤字を減らすことだったが、今のところ結果は裏目に出ているといえるだろう。

貿易戦争の影響は、もちろん貿易の縮小だけではなく、投資および消費など中国経済全体の減速に及んでいる。昨年の中国の経済成長率(実質GDP増加率)は6.6%で、これは天安門事件の影響で経済が低迷した1990年以来28年ぶりの低水準だった。

これがブーメランのようにアメリカ企業に跳ね返っている。アップルは売上高の2割を中国事業が占めているが、それが6四半期ぶりに減少し、iPhoneの価格は1~2割下がった。中国市場での新車販売でも、GMは10%、フォード・モーターは37%落ち込んでいる。

3月1日を期限とする米中通商交渉の結果、さらなる追加関税が実施されれば、こうした状況の悪化が加速することは明らかだ。だから投資も控えられる。制裁関税の標的が「中国製造2025」だから、とくにハイテク部門ではその傾向が顕著に表れている。

2.縮む日中貿易、中韓貿易

中国でハイテク製品の生産が急減したことによって、日中貿易も縮んでいる。12月の日本の輸出額は、前年同月比でマイナス3.8%だったが、最大の輸出先である中国向けが7%減ったことが大きく響いている。

日本の中国向け半導体製造装置の輸出は前年同月比34%減と大幅に落ち込んだ。これは直近ピークの8月の半分程度の水準だ。工作機械の受注額も10カ月連続でマイナスとなり、12月には56.4%減少した。携帯電話部品など通信器にいたっては67%も減っている(1月24日付日本経済新聞)。

日本だけではない。12月は韓国の半導体輸出(香港向けを含む)も前年同月比で19%減り、台湾から中国への輸出総額も9.9%減少した。またこの結果、日本から韓国への半導体製造装置の輸出が39.5%の大幅減となった。

韓国の輸出品目の25%は半導体で、輸出先の3割は中国だ。2018年の韓国の経済成長率は2.7%と、6年ぶりの低水準となった。韓国経済には半導体に代わる成長エンジンも、中国向けを補うだけの市場も見当たらない。2019年はさらなる減速が見通されている。

3.縮む世界経済

貿易戦争による中国経済の減速は、世界経済全体に暗い影を落としている。例えば年明けのオーストラリア・ドルは一時10年ぶりの安値を付けた。2018年年間でも約10%下落し、一段下げが予測されている。資源輸出の中国依存がもろに表れた結果だ(1月8日付同上)。

欧州景気の減速も鮮明だ。EU加盟28ヵ国GDP合計の約5分の1を占めるドイツ、2018年7~9月期の実質成長率が3年半ぶりにマイナスに転じた。ドイツ経済の成長エンジンもまた自動車だが、その柱であるVWグループの新車販売台数は昨年後半から前年同期比でマイナスに転じた。特に中国市場での落ち込みが顕著だ。

ダイムラーもBMWも、アメリカで生産するSUVを中国に輸出しているが、米中の報復関税合戦が収益を直撃すると報じられている(1月17日付同上)。

4.短くて、とても不透明な2月

米中通商協議の期限は3月1日だ。合意がなければ追加関税が発動される予定だが、その期日までにトランプさんは習近平さんとの首脳会談をする予定がないという。その一方で、2月末には金正恩さんとベトナムで会うという。その前の2月15日にはメキシコとの「国境の壁」予算問題について民主党との協議期限がやってくる。

世界経済は量的に縮んでいるだけではない。さまざまな悪い材料をその内部に圧縮している。にもかかわらず、ウォール・ストリート・ジャーナルによれば(1月17日付電子版)、ムニューシン米財務長官は対中制裁関税の取り下げを主張し、米中協議の責任者であるライトハザー氏(米通商代表部)はこれに反対しているという。

ホワイトハウスだけではない。「国境の壁」予算案についてのゴタゴタでは共和党から造反者も出た。通商だけではなく、外交も安全保障も、近頃「トランプ政権」というものの輪郭がぼやけて見える。

拍手欲しさにあれこれ思いつきを重ねるものだから、トランプさんはいろんなことを背負ってしまっている。2月5日、施政方針演説をするトランプさんの後ろに座っていたペロシ下院議長の、あのわざとらしいおおげさな身振りの拍手。思わず苦笑いを漏らしてしまったが、笑っている場合ではない。この2月の動きから、まったく目が離せない。

日誌資料

  1. 01/14

    ・米原油生産45年ぶり首位 エネルギー地政学一変
    シェール寄与、10年で2倍 純輸出も視野 脱中東・米国第一が加速
  2. 01/15

    ・中国新車販売が前年割れ 昨年2.8%減、28年ぶり 貿易戦争が影
    ・中国輸出入額前年割れ(12月) 対米不振、追加関税響く
  3. 01/16

    ・英、EU離脱案否決 230票、歴史的大差で メイ首相窮地に 野党が不信任案
  4. 01/17

    ・欧州景気、減速一段と 独・伊、四半期マイナス成長 英離脱が追い打ちへ
    昨年の新車販売5年ぶり減 0.8%減の1421万台 英は6.8%マイナス
    ・訪日客消費が最高 昨年2%増4.5兆円 1人あたりは横ばい <1>
  5. 01/18

    ・韓国半導体輸出9%減 12月、2年3カ月ぶり 中国向け大幅落ち込み
  6. 01/19

    ・「通信の秘密」適用を検討 総務省GAFAに規制の網
  7. 01/20

    ・トヨタとパナソニック EV電池を共同生産 20年に新会社、中韓勢に対抗
  8. 01/21

    ・中国6.6%成長に減速 昨年28年ぶり低水準 債務削減・貿易戦争が打撃<2>
    ・中国出生数200万人減 昨年1523万人 1980年以降で最少に <3>
  9. 01/22

    ・韓国、2.7%成長に減速 昨年、6年ぶり水準 半導体が低調
  10. 01/23

    ・対中輸出12月7%減 携帯部品など米中摩擦が影響 昨年、3年ぶり貿易赤字<4>
  11. 01/24

    ・中国ハイテク生産急減 部品・装置 対中輸出ブレーキ 世界景気の重荷に
    ・米下院議長、政府機関閉鎖解除まで一般教書演説を拒否
    ・英離脱、日本企業にも悪影響 車3社、関税負担1500億円
  12. 01/25

    ・ファーウエイ、5G半導体を独自開発 脱・米依存狙う
    ・ベネズエラ、国際社会二分 暫定大統領の承認巡り <5>
  13. 01/26

    ・外国人労働者 10月末最多146万人 14%増、派遣社員上回る <6>
    ・トランプ氏元側近訴追 ストーン氏に偽証罪 ロシア疑惑で特別検査官
    ・共和党、トランプ氏ときしみ 「国境の壁」予算案6人造反
    ・政府閉鎖3週間解除 トランプ氏譲歩 壁建設議論先送り
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