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週間国際経済2016(30) No.69
08/24~09/03

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今週のポイント解説(30) 08/24~09/03

企業は溜める、家計も貯める、政府は使う

1.労働分配率66.1%

 労働分配率とは企業の利益のうち労働者の取り分だ。これが昨年度、2007年以来の低さになったと財務省が算出した(9月3日付日経)。一方で企業の内部留保は4年連続で過去最高を記録し、前年度比6.6%増の377兆円となった。

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 上のグラフに見るように、安倍政権になって企業の内部留保は右肩上がりに増え、労働分配率は急降下している。異次元緩和で資金を供給し、法人税率を下げ続けたが、企業はこれを設備投資や賃金増に向ける気配がない。

 さらに日本企業は海外子会社にも利益を現地に溜めている。今年1~6月の海外子会社の内部留保は2兆5706億円になったと財務省が発表した(8月21日)。これも比較可能な1996年以降で半期ベースの過去最高となっている。

2.公的マネー、4社に1社筆頭株主

 さらにこれら大企業の株は公的マネーによって買い支えられている。日本経済新聞が試算したところ日銀とGPIF(公的年金運用法人)を合わせた公的マネーは、東証1部約1970社のうち474社で筆頭株主になっている(8月29日付日経)。

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 公的マネーの株式保有額は3月末時点で約39兆円、2011年は14兆円ほどだった。東証1部全体での保有比率は7%強、民間株主で最大の日本生命で約2%だ。アメリカでは公的マネーによる株式保有率はほぼゼロ、国営だった企業が多い欧州でも6%未満だという。

 先の追加緩和では日銀はETF購入を6兆円に倍増するというから、この比率はさらに高まる。野村証券によればこれは日経平均を2000円程度押し上げる効果があるらしい。

 そのGPIFの4~6月期の運用損益が5兆2342億円になったと発表された(8月27日)。国内株と外国株の合計で4兆7000億円の運用損、外国債も1兆5000億円の損失だった。

3.消費支出0.5%減、消費者物価0.5%低下

 7月の完全失業率は3.0%、これは21年ぶりの低さだ(8月30日総務省発表)。労働人口が急減したこともあって人手不足感が出ている。それでも7月の消費支出は前年同月より0.5%減っている。マイナスは5か月連続だ。

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 求人倍率は建設業で4.3倍、飲食サービスで2.9倍、タクシー業界も人手不足だ。しかしこれら求人のほとんどは非正規雇用で、賃金も全業種平均を下回ることが多い。雇用は消費に結びつかず節約志向がいっそう高まっている。

 7月の消費者物価も5か月連続でマイナスとなった。0.5%低下というのは3年4か月ぶりの下落幅だった。3年4か月ぶりといえば2013年3月だから、日銀の異次元緩和以前の水準に戻ったことになる。

4.来年度予算概算要求101兆円

 8月31日に締め切られた2017年度予算の概算要求は101兆円、これで3年連続の100兆円超えだ。2月に導入されたマイナス金利政策によって国債利払い費の圧縮が見込まれる。これで各省庁の上積み合戦を誘い、9月1日付日本経済新聞の見出しには「緩む規律」と出ていた。

 またこれには保育・介護士の賃上げや年金対策の費用は含まれていない。財政投融資も16兆円台に膨らみ、リニア中央新幹線の大阪延伸を前倒し費用が大きな比重を占めている。防衛費も5兆円を超えた。

 海外支援大盤振る舞いも健在だ。8月27日ケニアで開かれたアフリカ開発会議に出席した安倍首相は、今年から3年間でアフリカに官民合わせて3兆円規模の投資を約束した。こうした対外支援が呼び水となって大企業は海外投資に拍車をかける。溜めたおカネの使い方として、国内の賃上げよりもさぞかし魅力的であるに違いない。

5.医療・介護で1400億円圧縮

 そうした積極財政のなかにあって、しかし2017年度予算では高齢化に伴う社会保障費の伸びを5000億円程度に抑制する調整が始まっている。厚労省は概算要求ではその伸びを6400億円と想定しているから、1400億円ほど圧縮しなくてはならない。そのぶんは個人負担増を検討しているという。

 その抑制策一覧が次の表だ。高齢者の医療費、介護サービスの自己負担増が中心だ。

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 また、待機児童が2年連続で増加していることも分かっている。安倍政権の公約は「2017年末ゼロ」だった。保育所の定員は増えたものの、共働き世帯の増加で追いついていないのが現状だ。

 

 8月末の日本経済新聞の世論調査によると、安倍内閣の支持率は62%と前回調査より4ポイント上昇した。不支持率は5ポイント低下した。

 いつから日本世論は、日本経済に関心がなくなってしまったのだろう。

 

日誌資料

08/24
・日中韓外相会談(東京)首脳会談「年内に」開催へ協力確認

08/26
・待機児童、2年連続増加「17年末ゼロ」難しく 4月時点で2万3600人 <1>
 保育所定員10万人増も共働き世帯増加で追いつかず 潜在的には6万人
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・消費者物価0.5%低下(7月)3年4か月ぶり下落幅

08/27
・イエレンFRB議長「利上げ条件整う」(26日、ジャクソンホール講演)
 9月の可能性も排除せず 雇用改善、物価波及カギ 円相場は乱高下
・来年度予算、医療・介護で1400億円圧縮 個人負担増を検討
・公的年金運用損5兆円(4-6月)円高・株安響く
・東南アジア新車販売4%増(7月)4か月連続プラス インドネシア回復基調

08/28
・安倍首相、アフリカに3兆円投資表明 (アフリカ開発会議、ナイロビ)
 「官民挙げ支援」 成長支援、1000万人育成 潜むリスク、資源安で経済失速
・日韓通貨協定再開へ 財務対話、議論開始で合意(ソウル、27日)

08/29
・公的マネー、筆頭株主に 東証1部企業の4社に1社 市場機能低下も <2>
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・ヘッジファンド苦境 資金流出2009年以来の高水準 運用苦戦・コスト高重荷

08/30
・7月失業率低下、消費支出は0.5%減(総務省発表)雇用拡大さえぬ消費 <3>
 失業率3.0%、21年ぶりの低さ 雇用増はパート・非正規中心で節約続く
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・韓進開運(韓国最大手)、再建に暗雲 銀行団が支援を拒否  

09/01
・概算要求、緩む規律 マイナス金利で拍車 各省庁が上積み合戦 <4>
 国債費減でも3年連続100兆円超 危うい緩和依存
20160824_04
・インド7.1%成長に減速(4-6月)個人消費堅調も貸し渋り、投資が縮小 <5>
20160824_05

・ブラジル、景気後退続く GDP3.8%減(4-6月)消費・投資の低迷響く <6>
 ルセフ大統領罷免 弾劾裁判(政府会計の不正)で有罪 政権、資源安に対応できず
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09/03
・米雇用15万人増(8月)市場予想を下回る 利上げ時期判断難しく
・米新車販売に減速感 8月4.1%減 買い替え需要が一服
・日ロ首脳会談(ウラジオストク、2日)プーチン氏来日12月15日で合意
 安倍首相「領土進展へ手応え」「日ロ首脳定期会談を」 平和条約締結にも意欲
・労働分配率(企業利益のうち労働者取り分)昨年度66.1% <7>
 2007年以来の低水準 内部保留は前年度比6.6%増の377兆円 4年連続で過去最高を更新
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